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倒産(法人破産)・廃業・休眠の違い-メリット・デメリット

倒産(法人破産)・廃業・休眠の違いを説明できるでしょうか。
それぞれのメリット・デメリットは全く異なります。

 

倒産(法人破産)・廃業・休眠

新型コロナウイルス感染拡大防止による自粛ムードにより、経営状況が苦しくなったという会社は多いのではないでしょうか。
「コロナが収束するまで事業を休止したい……」とのご相談を受けることがありますが、休眠(休業)の他に、廃業・倒産(法人破産)という選択肢もあります。

これらの選択肢の違いについての知識を有している経営者は少ないのではないでしょうか。それぞれ選択肢によって、法的な効果は全く異なります。

いったん始めた事業は整理をしなければ簡単には終えることはできません。しっかりと事業を終えることが経営者の責任と言えるでしょう。
以下では、休眠(休業)・廃業・倒産(法人破産)のそれぞれの違いやメリット・デメリットについて解説します。

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休眠(休業)とは

休眠とは、会社を存続させたまま経営や事業活動を一時的に停止させることをいいます。法律用語では「休眠」といわれます。
経営状況が厳しい場合、廃業を考える方も多いと思いますが、廃業はさまざまなコストがかかります。そこで、廃業だけでなく休眠も選択肢のひとつとして加えてみてはいかがでしょうか。

 

休眠(休業)の手続

休眠(休業)の手続は役所に届出をするのみというとてもシンプルなものなので、経営者がひとりでも手続を行うことができるでしょう。

①事業を停止する

従業員や取引先に事情を説明して理解を求めたのち、事業活動をすべて停止させます。

②異動届出書を提出する

会社の所在地を管轄する次の3つの役所に以下の書類を提出します。休眠しなければならない理由に関するエビデンスなどの提出は不要です。

役所名 提出書類
税務署
  • 異動届出書(異動事項に「休業」、異動年月日に「休業した日付」を書く)
  • 給与支払事務所の廃止届(従業員がいる場合)
  • 消費税の納税義務者ではなくなった旨の届(消費税の納税義務者の場合)
都道府県税事務所
・市税事務所
  • 異動届出書(異動事項に「休業」、異動年月日に「休業した日付」を書く)
年金事務所
  • 健康保険
  • 厚生年金保険適用事業所全喪届

 

休眠するメリット

休眠するメリットは、以下のようなものがあげられます。

  • 役所に書類を提出するだけなので、手間も費用もかからない
  • 事業を再開するときも、書類を提出するだけなのでスムーズに再開できる
  • 許認可を取り直さずにすむ
  • 会社自体は存続しているので、新規に会社を設立するより信用を得られやすい

 

休眠するデメリット

休眠するデメリットは、以下のようなものがあげられます。

  • 事業を停止していても課税対象になる
  • 不動産を所有している場合は固定資産税が発生する
  • 定期的に役員変更の登記も必要になる

 

休眠するときの注意点

休眠(休業)時は事業を行わないと言っても、会社が存続している以上放置することはできません。休眠(休業)はどのような点に注意すべきなのでしょうか。

住民税の均等割が発生することがある

地方税法上、法人住民税が課されるのは「事業を行うための人的・物的設備があり、継続して事業が行われている事務所または事業所を有する法人」です。しかし、自治体によっては、均等割が発生することがありますので、その場合は均等割減免申請書を提出するとよいでしょう。

確定申告が必要

休業中でも毎年税務申告は必要です。休業前に赤字になっていれば、再開したときに繰越欠損金として申告することで節税効果もあります。2年連続確定申告をしなければ、青色申告の認定が取消されてしまうので注意しましょう。

役員変更の登記は忘れず行う

役員の任期が満了したり、改選されたりすると、休業中でも役員変更の登記をしなければなりません。登記を怠ると100万円の罰金が科されるリスクがあります。

最後に登記してから12年経つと「みなし解散」になる

休眠(休業)中だからといって、必要な登記をせずに放置すれば、最後の登記があった日から12年経つと会社が解散したとみなされ、「みなし解散」の登記がされてしまいます。この登記から3年以内に事業がまだ続いている旨を届出なければ事業を再開できなくなります。

 

廃業とは

廃業とは、理由のいかんを問わず経営者が自主的に経営や事業をやめてしまうことを指します。廃業するとさまざまな方面に影響を及ぼすこともあるので、休業や事業承継など他の選択肢も検討すべきでしょう。やむを得ず廃業するときは、体力面・資金面とも余力があるうちに行います。手続は最短でも3ヶ月、清算手続に時間がかかると2~3年かかることもあるので、留意しておきましょう。

 

廃業の手続

廃業の手続は、休業と比べて複雑で工程も多くなります。すべての手続を自力で行うことは難しいため、できれば弁護士などに相談のうえ手続を進めることをおすすめします。

①会社を解散して営業停止する

解散日を決めて従業員、取引先、顧客などに営業終了を通知します。従業員を解雇するときは、原則として解雇予定日の30日以上前に解雇予告通知をしなければなりません。解雇予定日まで30日に満たない場合は、解雇予告手当を支払うことになります。

②株主総会を行う

会社を解散するときは、取締役会の決議を経て株主総会の決議を行います。解散の決議は普通決議ではなく特別決議が必要なので、発行済株式総数の過半数の株主が株主総会に出席し、議決権の3分の2以上の賛成を得なければなりません。また、同時に清算人の選任に関する決議も必要ですが、こちらは普通決議でよいとされています。

③登記をする

株主総会開催日(会社の解散日)から2週間以内に、会社の所在地を管轄する法務局で解散の登記清算人選任の登記をします。

④解散の届出

法人税(国税)については税務署へ法人住民税や法人事業税(地方税)については都道府県税事務所や市区町村役場「解散届」を提出します。社員が一人もいなくなったら、社会保険については年金事務所「適用事業所全喪届」を、雇用保険についてはハローワークへ「適用事業所廃止届」をそれぞれ提出します。

⑤清算手続

清算人は財産目録と貸借対照表を作成し、解散時に株主総会で承認を受けます。解散後は債権者保護のため、すみやかに官報に解散公告を載せて債権者に申し出てもらいます。その後、売掛金などの債権を回収したり、財産を換価処分して債権者へ弁済したりして、残余財産があれば株主に配当しましょう。その後決算報告書を作成して株主総会で承認を受け、2週間以内に清算結了登記をすれば清算手続は終了です。

⑥確定申告

解散日の翌日から起算して1年を1事業年度として、清算中事業年度の確定申告を行います。また、残余財産確定後は、その確定日の属する事業年度について残余財産確定事業年度の確定申告も必要です。

 

廃業するメリット

廃業すると、以下のようなメリットがあります。

  • 休業とは異なり会社が消滅するので納税義務もなくなる
  • 「従業員の雇用や会社を守らなければならない」というプレッシャーから解放される
  • 多くの場合経常黒字なので、債務超過になることはなく多くの資産を残せる

 

廃業するデメリット

廃業すると、次のようなデメリットも生じます。

  • 事業資産をすべて売却して手放さなければならない
  • 許認可が必要な事業では、再び事業を立ち上げるときに許認可がすべて取り直しになる
  • 解散や清算に関する手続に費用や時間がかかる
  • 事業活動に問題があれば廃業後も対応しなければならないことがある

 

廃業するときの注意点

特に地方では、地域に根差して事業活動を展開している企業は雇用の受け皿になっており、地銀にとっても貴重な融資先としての役割を担っています。そのため、たった1社の廃業でも、地域経済への影響は決して小さくありません。周囲への影響を小さくするためには、計画的に廃業をする必要があります。

 

倒産(法人破産)とは

倒産とは、企業が経済的に破綻して、債務の支払が困難になった状態を言います。
不渡り手形などを出してしまい、銀行との取引が停止され経営の継続ができなくなることなどが典型例です。
資金繰りが苦しくなってどうにもならなくなった場合は、最終手段として倒産を選ぶことになります。ただ、一口に「倒産」といっても、大きく分けて再建型倒産手続清算型倒産手続の2つの方法があります。

 

再建型倒産手続と清算型倒産手続の違い

「再建型倒産手続」は、会社の債務を整理したうえで会社を再建させるものです。
再建型はさらに、民事再生法に基づく「民事再生」、会社更生法に基づく「会社更生」、「特定調停」の3つの手続に分かれます。しかし、再建には多額の資金が必要なため、中小企業で再建型が使われることは極めて稀と言われています。
「再建型倒産手続」は会社の財産や債務を清算して会社を消滅させるものです。清算型も、「破産」「特別清算」の2つの手続があります。弁護士などに相談して、会社の状態に合った方法を選びましょう。

再建型倒産手続 … 民事再生 会社更生 特定調停
精算型倒産手続 … 破産 特別清算

以下では、一番使われることの多い、清算型の中の破産について取り上げます。

「破産」という響きに対して、マイナスイメージを持っている経営者も多いようですが、「法人破産」は債務を0円にすることができる強力な手続です。また、法律上認められている手続ですので、必要に応じて「法人破産」も選択肢とすることをお勧めします。

 

法人破産の手続

ここでは、法人破産の手続の流れについて解説します。法人破産は裁判所を介する手続を踏むため、廃業よりも複雑になります。弁護士に相談しながら、適切な手順で進めるようにしましょう。

①破産申し立て

裁判所に破産申立てをします。その後、裁判官が破産申立者である経営者と面談(破産審尋)をしますが、場合によっては、取締役や経理担当者も呼ばれることがあります。

②破産手続開始決定

破産審尋をして破産手続の要件を満たしていると認められれば、裁判所より破産手続開始決定が発せられます。

③破産管財人選定

次に、破産する会社の資産を調査・管理、処分などを行う破産管財人を選定します。破産管財人は会社の帳簿や経営者からのヒアリングなどを通して資産状況を調査したうえで、債権者への配当のために財産を換価処分して現金化します。

④債権者集会(財産状況報告会)

管財人の換価処分と同時並行で、債権者集会も月1回のペースで数回開きます。これは、金融機関や取引先などの債権者に、破産会社の資産や換価処分状況について説明するものです。

⑤配当手続・破産手続終結の登記

換価処分が終われば、財産を債権者へ配当します。一応配当期日は指定されますが、その日までに配当が終了しているケースがほとんどです。配当も終了すれば、裁判所書記官が破産手続終結の登記をしてすべて終了となります。

 

法人破産のメリット

法人破産には以下のようなメリットがあります。

金融機関など債権者からの督促がなくなる

弁護士と委任契約を結べば、債権者に対して受任通知を送付してもらえるので、その時点で取り立てがストップします。債権者から何度も督促が来ている場合、督促が来なくなるだけでもストレスが軽減できるでしょう。

借金を返さずに済む

破産開始決定を出してもらえば、今までの借金がすべてゼロになるので、「借金を返さなければ」というプレッシャーからも解放されます。

 

法人破産のデメリット

法人破産には以下のようなデメリットもあります。

経営者も自己破産しなければならないことが多い

法人破産すれば、経営者自身も自己破産しなければならない可能性が高くなります。たいていの場合、経営者は会社の債務について連帯保証債務を負っているので、自己破産しない限りそれをずっと負い続けなければならないからです。自己破産すれば、経営者の持ち家など資産も換価処分をすることになります。

信用情報にしばらく残る

経営者が破産すると、JICCやCIC、KSCなどの信用情報情報機関に自己破産した事実が登録されます。一度自己破産すると、登録が抹消されるまで5~10年は新たに借入をしたり、クレジットカードを作ったりすることができません。

さまざまな制約が出てくる

自己破産すると、裁判所の免責決定が出るまでは経営者に資格制限が設けられ、弁護士・税理士などの士業や警備員、証券外務員などの仕事ができなくなります。また、郵便物も管財人に転送され自由に見られなくなる、破産手続中の旅行や転居には裁判所の許可が必要になるなど、さまざまな制約が生まれます。
もっとも、これらの制約は破産手続の間だけですので、3か月程度の制限になることがほとんどです。

管財人への説明義務がある

手続中に管財人から会社や自分の資産について説明が求められたら、随時応じなければなりません。

 

法人破産の注意点

法人の破産手続には時間もお金もかかります。法人の財産が全くなくなってからでは、「法人破産もできない。」という事態さえおこりかねません。
会社や事業をしっかりと終了させることが、経営者の最後の責任と言えます。
経営が傾いてきた場合は、給料の未払いなどが生じる前に、早めに弁護士に相談するようにしましょう。

 

まとめ

以上で見てきたように、会社をたたむ方法はひとつではありません。債務超過になっていなければ、休眠(休業)することで廃業を免れ、会社を続けさせる方法もあります。
しかし、長期の休業は、コストの面からどうしても経営を続けられないと判断すれば、廃業や倒産などを考えることになるでしょう。
経営状況が傾いてくると、どんどんと選択肢が狭まることがあります。早めに弁護士に相談してアドバイスや協力を求めるようにしましょう。

 

倒産(法人破産)のご相談はお早めに

業種によっては、コロナウイルスによる影響は甚大なものです。
社員への給与を支払えるうち、一度、事業をたたむことの相談を受けることもあります。
その場合は、追い込まれて動けなくなる前に、お早めに御相談に来て下さい。当事務所がお力になります。

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