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人事労務トラブルの相談で多い内容とは?-トラブル防止策を解説

企業法務の中で避けて通ることが難しい問題が「人事労務トラブル」です。ただ、「人事労務トラブル」と一口にいっても具体的にどのようなことがトラブルに発展してしまうのか明確には分からない、というのが実際のところではないでしょうか。
ここでは、人事労務トラブルについて、内容や原因、有効な対策などをまとめて弁護士が解説します。

企業が陥るよくある人事労務トラブルとは?

厚生労働省が公表した「平成29年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によれば、相談窓口に寄せられた総合労働相談件数は110万4,758件で、そのうち民事上の個別労働紛争の相談件数は25万3,005件となっています。

相談内容の内訳

上位の相談内容は以下の通りです。

出典:厚生労働省「平成29年度個別労働紛争解決制度の施行状況」

「雇用」に関する問題

特に注目すべきは、「雇用」関連についての相談です。
自己都合退職(12.8%)、解雇(10.9%)、退職勧奨(6.8%)、雇止め(4.7%)、出向・配置転換(3%)と、雇用関係の相談を合わせると総相談件数の約4割近くを占めることとなります。
労働者側から申し入れられる自主退職や企業側からの解雇など、雇用関係の終わり方には様々な形がありますが、労使が真に合意した過程や結果でない場合にトラブルに陥ることが多いようです。
また、退職という結果そのものには合意していた場合にも、退職に至るまでの経緯時期退職手続き退職金などもトラブルの原因となります。

なぜ人事労務トラブルは発生してしまうのか?

このような人事労務トラブルは、なぜ発生してしまうのでしょうか。
その原因の多くは元を質せば、労使間で情報共有が徹底されていないことに尽きます。

企業側としては、法定の手続き通りに就業規則を作成さえすれば、その内容は従業員に周知徹底されているものと考えます。しかし、従業員の目線で考えると、長く細かい就業規則を自主的に読み込むということはほぼないでしょう。目を通したとしても、例えば有給休暇の取得可能日数など、手続きを行うためにその部分だけを読むことが大半です。
このように、「法律に則って作成、設置しているのだから知っていて当然」という企業側と「そんな規則があることは初めて知らされた」という労働者側のスタンスの違いから、トラブルが発生するのです。

また、労働関連の法律は近年「働き方改革」と称して、様々な項目が大きく改正または新設されました。この改正にまだ現場の実務が追い付いていない状況も多く見受けられます。企業側が法的に課された義務を確実に果たしていないこともまた、トラブルの火種となりますので注意が必要です。

人事労務トラブルを防止するために実施すべきこととは

労使で共通認識をもつこと

人事労務トラブルの防止策として最も根本的な方法は、まず労使全員が人事労務関連の知識に触れることができる機会を作り、共通認識を持つことです。
例えば、社内での定期的な研修などは実施されている企業が大半でしょう。しかしそれらも、形式的な研修ではなく、全員が、必要な労働・労務に関する基礎知識をしっかりと理解できることが必要です。
また、年に1回の研修のみではなく、日常的に労務問題への意識を高められるように社内掲示を行うなどの方法も有効と言えます。

事前に制度設計をしておくこと

企業側から労働者側へ提供することとしては、労働者が感じた問題や疑問について相談できる制度を構築することが挙げられます。
このような制度に求められることは、形骸化していないことと、中立性が保たれていることです。形だけでその仕組みがしかるべき時に機能しなければ、企業は後々責任を問われます。
また、相談件数が第1位である、職場内の「いじめや嫌がらせ」などデリケートな問題についても労働者が訴え出ることができるようにするためには中立で秘密保持力の高い制度設計が求められます。

人事労務トラブルは、雇用問題の他にもいじめやハラスメントなど、対応に一層の迅速さや繊細さが求められる場面も多くあります。起こりうるトラブルの性質や重要性を認識し、事前に各トラブルの性質に対応できる制度設計をしておくことが重要です

どのような点に気を付けて制度設計をすれば良いのか迷った場合、そして万が一トラブルが起きてしまった場合には、弁護士などの法律の専門家に相談してみてはいかがでしょうか。

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