2018年の倒産企業の47.7%が、帳簿上では黒字ながらも倒産する黒字倒産と言われています。
実は、黒字倒産の原因の一つに、債権回収の失敗が挙げられます。
ここでは、会社運営に直結する債権回収について、基礎知識から債権回収の方法未回収債権を防ぐための方策まで、まとめて説明します。

そもそも債権とは何か?

債権とは、特定人(債権者)が特定人(債務者)に対して、一定の財産上の行為を請求できる権利のことを指します。債権者が請求を行う側債務者は請求に応える側です。
ここで、商品を製造・販売している企業を想定して、債権債務を理解してみましょう。

発生する債権債務

企業は、取引先と売買契約という契約を結びます。すると、この契約によって2つの債権が発生します。

1つ目が、「商品引渡請求権」です。この権利の内容は、「契約の目的物とした商品を渡してください」というものになります。
この権利に関して、製造企業は債務者となり、取引先が債権者となります。取引先は「商品を渡してください」と請求を行うことができ、製造企業は取引先に商品を渡さなくてはなりません。

2つ目が、「代金支払請求権(売掛金)」です。この権利はすなわち「売買代金を支払ってください」ということができる権利です。
こちらに関しては、製造企業は債権者となり、取引先は債務者となるのです。取引先は、製造企業から請求された売買代金を、支払わなくてはなりません。

債権回収とは

債権回収とは、債権者が自己の売掛金などの債権を回収することです。
よって、一般的に債権回収と言ったときの「債権」とは、上記の例で言う「代金支払請求権」などの金銭債権を指すことが多いです。

債権回収の必要性

企業にとって、債権回収ができない状況は致命的といえます。
というのも、債権=金銭(キャッシュ)ではないからです。
先ほどの例でいえば、商品を製造する企業は、「代金支払請求権」という債権を実行して初めて、商品代金が入金され実際に金銭を手にすることができます。
いくら売上げが伸びて債権を沢山持っていても、それらを実行して金銭として回収を行わなければ意味がないのです。債権回収を怠ったり失敗したりして金銭が手元になければ、資金難に陥り事業を続けていけなくなります。このようにして、黒字倒産という事態が多発しているのです。

債権回収の方法とは?

債権は確実に回収していくことが必要ですが、当然ながら適法な手段であることが必要ですし、他の債権者の権利を侵害するような手段や方法は避けなくてはなりません。
債権回収を行う主な方法は、大きく分けて3つあります。

督促

最もストレートな方法で、直接相手方に支払いを請求することで、支払いを受けようという方法です。
などの多様な方法があります。特に書面の場合は、内容証明郵便(誰にいつどのような内容の書面を送付したかを、郵便局が証明してくれる制度)で証拠を残す手段がよく用いられます。

裁判所による手続

裁判所の手続によって、支払いを促す、場合によっては命じてもらう、強制的に財産などを差し押さえるなどの方法があります。

  • 支払督促…裁判所書記官から督促の書面を送付してもらうこと
  • 民事調停…調停委員の進める話合いで、支払いについて債務者と合意すること
  • 少額訴訟…60万円以下の金銭の支払いを請求する裁判で、支払いを命じてもらうこと
  • 通常訴訟…上記の金額に制限がない場合
  • 強制執行…強制的に債務者の財産を差し押さえて、そこから金銭を回収すること
その他の方法
  • 債権譲渡…相手方が持つ第三者への売掛債権の譲渡を受けるという方法
  • 相殺…相手方に対して債務を負っており条件が整っている場合に、その債務と打ち消す方法
  • 商品の引揚げ…納入した商品が相手方の手元に残っている場合に当該商品を引き揚げることで売買代金債権を回収してしまう方法

未回収債権を発生させないために

債権を未回収にしないために重要なことは、相手方に自社を「優先的に支払うべき取引先」と思わせることです。
そのためには、例えば以下のような方法で関係を強化することが大切です。

  • 継続的な取引でも、毎月確実に請求書を送付し、請求漏れをなくす
  • 入金の指定期日に必ず確認し、遅れている場合は速やかに支払いの督促を行い、確実な入金可能日時を確認する
  • 入金がない場合は、出荷停止や取引中止などの毅然とした姿勢を見せる

まとめ

「契約書があるから大丈夫」と悠長に構えて債権の回収をないがしろにしていると、気付いた時には手遅れということになりかねません。日頃から取引先に関しては情報を収集し、不安要素が見つかった場合には早めに、弁護士などの専門家へ相談して対策を講じることも大切です。