「あの会社の製品だ」と思って購入しようとしたところ、実際には他社が発売している類似商品だった、という経験をされたことはないでしょうか。各社による製品やサービスには、その企業を示すロゴやマークがついています。このマークは「商標」と呼ばれており、企業にとって非常に大切なものになりますので、その役割や持っている効力を正しく理解する必要があります。そこでここでは、商標について他の知的財産権の内容とともに解説します。
商標権と著作権の違いとは?
商標と商標権
特許庁のホームページによれば、商標とは「事業者が、自己(自社)の取り扱う商品・サービスを他人(他社)のものと区別するために使用するマーク(識別標識)」と定義されています。
商標には、単なるマークやネーミングという意味合い以上に、企業がこれまで積み上げてきた「消費者からの信頼による価値」という側面があります。そのため商標は、企業ブランドを体現する重要な財産の一つなのです。このように商標を一つの財産として保護するための権利が「商標権」です。
商標権は、商標+商標を付する商品・サービスが一体となって権利の内容を成します。商標は登録が必要ですので、特許庁に登録申請を行い、そこで無事に登録がされれば指定した範囲内で商標の独占的な使用が可能となります。
著作権との比較
同じく知的財産権の一つである「著作権」との相違点は三つです。
一つ目は、上記の通り商標権が認められるためには登録が必要であるという点です。著作権は著作物が創作されたと同時に自然に発生しますが、商標権は商標の作成や使用だけで自然発生的に認められるわけではありません。商標権は取得するために、特許庁への商標の出願、そして商標登録を受ける必要があります。
二つ目は、権利の有効期間です。著作権は死後50年まで保護されますが、商標権の保護は一度の登録で10年間となっており、延長したい場合には更新を行わなければなりません。
そして三つ目は、権利の強さです。著作権であれば、元の著作物を知らずに偶然類似した場合は盗作とならない可能性もあります。しかし商標では、商標登録を知らなかった場合でも、同分野で類似の表示を使用した場合には侵害行為に該当するため、注意が必要です。
知的財産と知的財産権にはどのようなものが存在するか?
知的財産権とは何か
一般的な定義では、知的財産権とは「知的創作と経済活動におけるマークに対する排他的独占権の総称」です。
簡単に言い換えると、「商標権」や「著作権」などの知的財産権で保護される対象が、知的な創作活動により創り出された「知的財産」で、それらを保護するために様々な「知的財産権」が存在するということです。
知的財産と知的財産権の種類
知的財産権は、保護する対象によって三つのカテゴリーに分類することができます。それぞれに属する知的財産の種類と対応する知的財産権を整理すると以下のようになります。
テクノロジーに関する知的財産権
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発明……特許権
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考案……実用新案権
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意匠……意匠権
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トレード・シークレット(営業秘密)……不正競争防止法による保護
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植物新品種……育成者権
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半導体レイアウト……集積回路配置利用権
マークに関する知的財産権
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商標……商標権
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商号……商号権
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周知・著名商品投票時……不正競争防止法による保護
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商品形態……不正競争防止法による保護
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地理的表示……地理的表示法による保護
アートに関する知的財産権
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著作物……著作権・著作者人格権
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実演等……著作隣接権
企業の知的財産を守るにはどうすればいいか?
以上のように知的財産として認められているものの多くが、企業に関わるものになっています。よって、これらは正しく確実に保護しておかなければ、他の企業に使用されたり、最悪の場合には先に知的財産権を持たれてしまったりすることになります。
それでは、実際に企業が自社の知的財産を守るには、どのような対策が必要なのでしょうか。
知的財産権の取得
自社で開発した発明はもちろん、デザインや商標なども含めて、まずは特許庁に出願し登録を行うことが最優先事項です。いかに自社の開発であっても、先に登録されれば他社が独占的に利用することが可能となります。自社のものとして価値を保護するには、自ら迅速に行動を起こすことが必要です。
国内・海外の情報の取得
自社の知的財産権が侵害されていないか、定期的に状況の確認を行うことも必須です。
例えば、「特許情報プラットフォーム」を利用すれば、他社の知的財産権の出願状況や登録状況の把握が可能です。
また、海外の動向にも注目する必要があります。その場合には、模倣品被害の多発する地域の情報をまとめた「模倣対策マニュアル」が有用です。各国の知的財産制度や権利の出願窓口などの紹介もなされ、法的措置を考える上でも非常に参考となります。
まとめ
自社の製品やサービスを最も価値のある状態で守るために、知的財産権は活用することが必須となる強力な権利です。また、一度権利を取得しても油断せず、定期的に他社の登録状況や、広く国内外の市場を調査することが重要になります。
万が一、自社の商標権や著作権を始めとする知的財産権の侵害が発覚した場合には、法的措置の検討を含め、何らかの対策を講じる必要がありますので、速やかに弁護士などに相談することをおすすめします。