「コロナ禍を切り抜ける知識と実務」と題しまして開催しております無料WEBセミナーの第1部、「退職勧奨」全3回が、先日7月30日をもって終了いたしました。ご参加いただきました皆様、誠にありがとうございました。

今回は、セミナー内で頂いた質問とその回答を、掲載させて頂こうと思います。

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Q1.再就職支援は必要か?

A .必須とまでは言えません。

退職勧奨は「労働者の退職を誘う行為」という枠組みがあるのみで、その際に提示する条件等については一切決められていません。よって、極端に言えば、単に「退職して欲しい」とだけ伝えて労働者がそれに応じれば、退職勧奨は成り立ちます。

しかし、労働者が何の得もない退職勧奨に応じることは考えにくいものです。そこで、会社は、誘いに応じてもらうための手段として様々な条件を提示していくことになります。再就職支援も、その条件の一つにはなり得るでしょう。

なお、退職勧奨ではなく、整理解雇においては「再就職支援を行うべき」と言われることもありますが、特に中小企業等では現実的な話ではないように思われますので、「必須とまでは言えない」と考えます。

Q2.退職勧奨に応じない場合、賃金の減額を明言しても良いか?

A.賃金の減額そのものが適法に行える状況であれば問題ない。

退職勧奨と賃金の減額を、切り分けて考えることが必要です。

退職勧奨に応じたか応じなかったかに関わらず、このまま勤務を続けてもらった際には賃金を下げなくてはならない、という場合には賃金の減額に言及しても問題ないでしょう。逆に、減額の必要性がないにも関わらず、退職勧奨に応じなかったペナルティとして減額を行うこと、また言及することは許されません。

この際、賃金の減額は不利益変更の問題となりますから、会社の経営状況等に応じてその有効性が判断されることになります。

なお、実務的なアドバイスも付け加えますと、賃金の減額を述べることは、退職の強制とも捉えられかねませんので、慎重に行う必要があります。

Q3.退職勧奨による退職にも関わらず、労働者が「クビにされた」と主張する場合の対処法は?

A.弁護士・社労士による書面連絡を試みることが有効です。

最近は、経営者と同じように労働者もインターネット等を通じて情報を得ている時代です。しかし、そのようなインターネット等の情報は、労働者目線での誇大な表記がなされているものもあり、会社側が正しい説明を試みても水掛け論になってしまうことが多々あります。

そのような場合には、社労士・弁護士等、士業の先生にご相談され、退職勧奨の事実と法的な説明を書面にして送付することが有効かと思われます。

また、できれば、退職勧奨を行う前に、弁護士・社労士に相談して、できれば同席してもらって適切な退職勧奨を行うことが、特効薬と言えるでしょう。

Q4.退職勧奨を行う際の、対象者はどう選べばよいか?

A.原則は、誰でも構いません。ただし、実務的には基準を持った方が行いやすいでしょう。

退職勧奨は、あくまで退職を誘引する行為であり、強制する行為ではありません。よって、法的な原則としては、誰に対して行っても問題はありません。

 

ただし、実務的には、成績不良等ある程度客観的に認識可能な基準を設けた方が、退職勧奨時の本人への説明が行いやすくなると考えられます。

Q5.退職の合意書において、「互いに一切の債権債務を有さない」という清算条項を設ければ、その後に、退職勧奨無効等、一切の請求を妨げることができるか?

A.有力な条項ではあるが、合意書そのものが無効とされた場合には効力を失うので注意が必要です。

合意書は必ず作成する必要のある書面です。しかし、「退職勧奨時に、“選択の自由”が侵害された」という争いとなった場合には、「合意書自体が強制的に書かされたものである」として無効という判断になる可能性があります。

合意書そのものが無効となると、合意書に記載された条項も全て無効・取消の対象となりますので、清算条項が設定されていても完全に安心とは言えません。

ただし、清算条項は、労働者に対して一定の牽制ないしは抑止力としては非常に有効ですので、合意書を作成する際には記載すべき項目の一つではあるでしょう。

Q6.退職勧奨における選択の自由を確保した証拠として、退職時の書面に「選択の自由がありました」と記載するのはどうか?

A.退職を合意した際の条件を記載する方が効果的です。

Q5と同じく、後に「退職時の書面自体が、自由意思ではなく強制的に書かされたものだ。」と主張される可能性があります。「選択の自由がありました。」と書かせることで、選択の自由が確保されたことにはなりません。

なお、適法に作成された退職合意書であることを前提として、自由意思の証明として有効に働くことが期待される事項としては、労働者が退職勧奨に応じた「条件」の記載が考えられます。すなわち、労働者が勧奨に応じる可能性が十分にあると感じられる条件を提示したという事実を記載しておくことが、労働者が自由意思でその提示に合意したことを推認させるという働きがあります。

Q7.退職勧奨を断った従業員に対して、再度退職勧奨を行う場合、どのくらいの期間を空けるべきか?

A.期間はケースバイケースです。期間の長さよりも、状況の変化に着目するべきと言えます。

会社の経済状況が悪化した、逆に以前の提案時よりも退職金を支払える算段がついたなど、会社側の環境の変化。または、労働者の子供が就職して扶養から外れたなど、労働者側の環境の変化。さらには、社会情勢の変化など、各当事者を取り巻く環境に変化があった時が、再度の退職勧奨を行う目安となります。

前回の退職勧奨において労働者がきっぱりと拒絶した場合には、状況の変化がない限りは、控えたほうがよいでしょう。

なお、実務的には、1度目の退職勧奨が終わるときに、「一週間後に、ゆっくり考えて、もう一度、考えを聞かせてもらえますか。」という風に、次回の退職勧奨を行う時期について合意をとっておくという方法もあります。

Q8.退職勧奨において、「会社はあなたに辞めて欲しいと思っている」という発言は問題ないか?

A.前後の文脈次第にもよります。

会社の意思を伝えること自体は問題がないでしょう。しかし、経営事情や対象者を選んだ理由などを伝えずに、「辞めてほしい」とだけ伝えますと、会社からの嫌がらせと捉えられかねません。誠意をつくして説明をすることをお勧めします。

Q9.合意書に記載する際、金銭の名目は「解決金」で良いか?

A.特に問題ありません。

金銭の名目よりも、精算条項が記載されていることが重要です。また、Q6で説明しましたように、退職勧奨に応じた条件などを記載することも忘れないようにするべきです。

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